前項に書いたように、マンションと一戸建てトイレリフォームの工事費用についてはあまり差がないのですが、マンションにお住まいの場合は、注意しなければならないことがいくつかあります。
床排水か壁排水かの違い
1つ目の注意点は、「床排水・壁排水の違い」を把握することです。
戸建て住宅のトイレは、排水を下方向に流す「床排水」の方式であることが多いのですが、マンションの場合は、壁方向(横方向)に排水を流す「壁排水」の方式である場合があるのです。
便器にも床排水用と壁排水用の2種類があり、ご自宅の排水方式に合った便器を用意しなければなりません。
もしDIYで便器を交換することを考えている方は、間違った排水方式の便器を購入しないように注意してください。
賃貸マンション・分譲マンション・中古分譲マンションでの違い
2つ目として、「賃貸・分譲・中古分譲でトイレリフォームの扱いが異なる」ということに注意してください。
どの場合でも、マンションの規約を確認し、トイレをリフォームして良いかどうかを確認しておきましょう。
まず賃貸マンションの場合ですが、物件内にある設備(トイレのことです)の所有権は大家さんにあります。つまり大家さんの許可を得たうえでトイレをリフォームすることになります。便器を交換する場合、交換前の便器の所有権は大家さんにあります。退去するときに返却できるように保管しなければなりません。
退去時には原則的に入居したときの状態に原状回復するのがルールなので、それが難しいようなリフォーム工事はしないほうが良いでしょう。
次に分譲または中古分譲マンションの場合です。この場合は居住者が基本的には所有者ということになります。
物件内の設備の多くは所有者のものなので、トイレを交換する場合、交換前の便器が不要なら、業者に頼んで処分してもらっても構いません。
ただし、マンション規約によって禁止されている工事内容もあるかもしれませんので、マンション規約をよく読んでリフォーム計画を立てましょう。
壁排水トイレは交換によって出っ張る?
3つ目の注意点は、1つ目の注意に書いた「壁排水」だった場合には、「トイレを交換すると前方向に出っ張る可能性がある」ということです。
壁排水トイレにはさまざまなラインナップがありますが、新設ではなく交換する場合には配管のつなぎ部分に「アキレスジョイント」という部材を使用します。すると現状よりも前の位置に出っ張って設置することになるのです。
そうなると、必然的にトイレ内の空間が手狭になってしまいますので、トイレの使い勝手が大きく変わったと感じる可能性があるのです。
ただし、交換前の時点ですでにアキレスジョイントを使用している場合もあります。この場合には交換前後でトイレ前方向に出っ張ることはありません。ただし交換する便器自体が奥行きのあるタイプだった場合は、その分だけ出っ張る可能性はあります。
立管と柱型の確認が必要
4つ目の注意点は「立管と柱型の確認が必要になる」ことです。
トイレの奥や左右の壁に出っ張りや大きな管が設置されていることがあります。多くの場合、それは排水管のはずです。
マンションのような集合住宅ではよくある構造で、便器の後ろの空間を排水管が占領しており、リフォームで設置できる機種に制約が出てしまうのです。
基本的には、立管や柱型を避けるようにトイレを設置することになりますが、たとえばトイレ右側に立管などがある場合、便器の右側に排水レバーが位置している便器は設置できなくなります。
そのような場合は反対側に排水レバーがある機種にしなければならなくなるので、ご自宅の立管・柱型の位置をきちんと把握しておく必要があるのです。
タンクレストイレは水圧調査が必要な場合もある
5つ目の注意点は「タンクレストイレに交換する場合は水圧調査が必要になる」ということです。
一般的な組み合わせトイレは、タンク内に水を貯めて流す仕組みです。この場合は水道管の水圧が弱くても問題なく使用できます。
しかし、タンクレストイレの場合にはタンクがなく、水道管に直結しているだけなので、水道管の水圧が弱いときちんと流せないことになり、交換できません。
マンションでは基本的に高層階にいくほど水圧が弱くなるため、タンクレストイレを利用できるレベルの水圧があるかどうかを事前に調査しなければならないのです。
なお、水圧が不十分な場合でも、加圧装置を搭載している便器や、内部にタンクを搭載しているタイプもあります。
トイレに適した床材を選定する
6つ目の注意点は、便器だけでなくトイレの内装工事もする場合ですが、その場合は「トイレに適した床材を選定する」ことです。
一般的に、トイレには以下のような床材が使用できます。
トイレとして掃除のしやすさや撥水性、アンモニアや洗剤に強いかどうかということを考慮したほうがいいでしょう。
例えばクッションフロアは掃除しやすいですが、タイルのような耐久性はありません。
タイルの場合は耐水性と防汚性に優れており掃除もしやすく、耐用年数も長いですが、濡れると滑りやすく、交換する際には費用がかかるというデメリットがあります。
材質によってメリット・デメリットが異なりますので、特徴をしっかりと把握して床材の交換を検討してください。
トイレの広さと便器の大きさのバランスを考慮する
7つ目の注意点は「トイレの広さと便器の大きさのバランスを考慮する」ことです。
一般的にはトイレは広い部屋とは言えません。元から狭いところに大きな便器を取り付けると、たとえ便器自体が高性能でも使い勝手は悪いでしょう。
トイレの広さに対して大きすぎない便器に交換しましょう。
トイレ内の電源をチェックしておく
8つ目の注意点は「トイレ内の電源を確認しておく」ことです。
ウォシュレットやヒーター付きの便座は電気を使用しますので、トイレ内にコンセントがないと使えません。
現在、それらを使っていない場合は、トイレ内にコンセントがあるかどうか知らない人もいると思います。まずはトイレ内に電源があるかどうかをチェックし、必要なら配電工事も検討してください。
タオル掛けやペーパーホルダーの位置を検討する
9つ目の注意点は「タオル掛けやペーパーホルダーの位置を検討する」ことです。
前項にも書いたように、基本的にはトイレは狭い部屋なので、タオル掛けやペーパーホルダーを新設したりする場合には、人の動きの邪魔にならないようにしなければなりません。
設置する位置によって使い勝手も変わってきますので、リフォームを計画するにあたってはこれらについてもきちんと考慮したうえで計画を立てましょう。
収納の設置場所のレイアウトを検討する
10個目の注意点は「収納の設置位置のレイアウトを検討する」ことです。
本記事前半で、トイレ内に収納スペースを確保するというオプションがあることを紹介しました。秋桜スペースを設けるとトイレの利便性が上がりますが、当然その分だけトイレ内が狭くなります。設置する収納家具や設置位置はよく考える必要があります。
たとえば、トイレが狭いので奥側の天井付近に突っ張り棒を設置してトイレットペーパー置き場にするといったアイデアを実践している人もいます。床のスペースが不十分な場合には、そうした工夫も研究してください。
便器交換と同時に床の張替えも検討する
11個目の注意点は「便器交換と同時に床の張替えも検討する」ことです。
先ほども触れていますが、トイレの床材は素材によってその特徴が大きく異なり、掃除のしやすさや耐久性に大きく影響します。
また、マンション自体の築年数が古い場合、床材もすでに劣化しているはずですので、トイレフォームを機に、床材の交換も計画に取り入れることをおすすめします。
プロの一言アドバイス
実際に物件を見たり図面を確認したりしないと、どこまでリフォームで手を入れられるか、また注意すべきポイントは何かわからないこともあります。
そのような場合は必要な情報を集めて業者に相談しながら、最善なリフォーム計画を練りましょう。