最近では水洗式でないトイレは珍しいものになりましたが、今でも下水道設備の整っていない地域や古い建物では汲み取り式が使われているケースはあります。
汲み取り式トイレの仕組みなどを中心に、汲み取り式トイレがどのようなトイレであるのかについて解説します。
汲み取り式トイレの特徴と仕組み
汲み取り式トイレは「ぼっとん便所」などとも呼ばれる古いタイプのトイレです(簡易水洗トイレは便器が水洗なので、「ぼっとん」とは異なります)。
最大の特徴は、トイレが下水道や浄化槽につながっておらず、そのため排泄物は「便槽」と呼ばれるタンク状の構造物に溜められるという仕組みにあります。
便槽に溜まった排泄物は自然消滅するっことはありません。定期的にバキュームカーに内容物を汲み取ってもらわなければならないことから、「汲み取り式」という名前になっています。
下水道の整備されていない地域では、今でも汲み取り式トイレを使っているご家庭もあります。ぼっとん便所はトイレを使用しても水道代がかかりませんが、その代わり、バキュームカーを呼ぶ費用が掛かります。
汲み取り式トイレにもメリットはあります。水も電気も使わないため、災害時など、停電や断水の中でも普段と同じようにトイレを使用できることです。
しかし、平時においてはそのメリットも享受できないため、水洗式トイレにリフォームしたいと希望している方は多いと思います。下水道直結式にするか、浄化槽式にするかは、近隣の下水道や用水路などの設置状況にもよりますので、工事業者に相談することをおすすめします。
汲み取り式トイレの使用上の注意
汲み取り式トイレには次のような注意すべきポイントがあり、これをデメリットと感じる人が多いでしょう。
悪臭や害虫対策をしなければならない
1つ目の注意点は「悪臭や害虫対策をしなければならない」ということです。
汲み取り式トイレでは便槽に排泄物が溜まっているため、放置すると、当然ながら悪臭や害虫が発生します。
便器にふたをしているご家庭も多いと思いますが、根本的な対策にはならないでしょう。
悪臭を防ぐには、なるべく高い頻度で汲み取りに来てもらうことですが、そのためには費用が掛かります。
手っ取り早いのは、消臭剤を用意することです。
問題は害虫対策のほうです。これも殺虫スプレーや洗浄液を流し入れることが対策になります。有機溶剤を使用すると配管が傷つく恐れがあるため、使うならバイオ系の薬剤がおすすめです。
簡易水洗のほうが汲み取り頻度が高くなる
2つ目の注意点は「簡易水洗のほうが汲み取り頻度が高くなる」というポイントです。
水を流さないぼっとん便所の場合より、便槽に排泄物を流す際に水を使用する簡易水洗のほうが、水の分だけ便槽に内容物が溜まるスピードが早くなります。
そのため、水を使用しないぼっとん便所より早く便槽がいっぱいになるので、ぼっとん便所より高い頻度でバキュームカーを呼び、汲み取ってもらわなければなりません。
人や物が落下するリスクがある
3つ目の注意点は「人や物が落下するリスクがある」というポイントです。
実際にぼっとん便所を見たことがある方ならイメージできると思いますが、ぼっとん便所は便槽に直結している大きな穴が開いています。
この穴に、スマートフォンや文房具などの小物類はもちろんのこと、場合によっては小さなお子さんが落下したりすることがあるのです。
小さなお子さんがいるご家庭では、簡易水洗トイレにリフォームすることをおすすめします。
汲み取り式トイレを水洗トイレにリフォームする際の費用
本記事前半でも解説した通り、汲み取り式トイレから水洗トイレにリフォーム工事する費用は、安くても40万~50万円ほど、高い場合だと100万円以上掛かります。
ひと口に「トイレを水洗式にリフォームする」といっても、ただ便器を取り換えれば良いわけではなく、具体的には以下の項目で費用が発生することになります。
上記すべての費用が必ず発生するとは限りません。たとえば壁紙を変更したりしなければ内装費用がかかりません。
ただし、逆に特殊な工事が必要な場合には、上記以外の費用が加算されることもあります。
たとえばトイレを設置するには給水管や排水管が必要ですが、その設置距離が長いと、それだけで10万円以上の費用差が発生することもあるのです。
どういった工事が必要になるか、どのような希望を満たすためにリフォームするのか、ということによって費用相場は大きく変わります。後で解説する補助金などのこともあわせて、工事業者に相談して見積もりを出してもらってください。
汲み取り式トイレを水洗トイレにリフォームするメリット
前項で汲み取り式トイレのデメリットをいくつも書きましたが、水洗トイレ(一部のメリットは簡易水洗を除く)にリフォームすれば、次のようなメリットが得られます。
バキュームカーが不要になる
1つ目のメリットは「バキュームカーが不要になる」ということです(簡易水洗の場合は別)。
下水道や浄化槽を利用する水洗トイレでは、これまでのように排泄物を便槽に溜め込む必要がありません。バキュームカーによる汲み取りが不要になります。
水洗トイレなので水道代や電気代はかかるようになりますが、バキュームカーにかかる費用は丸ごとなくなります。
臭いや害虫の問題が解消されて衛生的
2つ目のメリットは「衛生的である」ということです。
便槽に排泄物を溜める汲み取り式トイレは、どうしても臭いや害虫の対策をしないと不衛生で、生活の質を下げることになります。
しかし、水洗式トイレには封水があり、排水管からの臭いが逆流するリスクを抑えてくれています。害虫の発生も防ぐことができます(ただし汚水桝に害虫が発生するリスクはあります)。
災害の際に汚物が溢れださない
3つ目のメリットは「災害の際に汚物が溢れださない」ということです(簡易水洗の場合は別)。
平時においては便槽に外から水が入り込むことはありません。しかし地震などの影響で便槽に水が入り込むような亀裂などができると、大雨などの際に便槽が溢れて、内容物である汚物が外に溢れ出してしまいます。
水洗式トイレの場合は汚水桝や浄化槽に汚物が溜まるリスクはあるものの、便槽があふえっるような深刻な事態に陥るリスクは少ないと言えます。
便槽への落下のリスクがなくなる
4つ目のメリットは「便槽への落下のリスクがなくなる」ということです。
汲み取り式トイレ、とくにぼっとん便所には便槽に直結する大きな穴があり、小物や体の小さなお子さんが落下するリスクがあると書きました。
水洗トイレならそのような穴はありませんので、お子さんが落下してしまうことはありません。(小物が落下する可能性はあります)
プロの一言アドバイス
ぼっとん便所は、簡易水洗トイレにリフォームするだけでも、悪臭や害虫、落下リスクを抑えられるというメリットがあります。
ただし便槽に由来するメリットは、簡易水洗では享受できないので、可能なら通常の水洗トイレへのリフォームを検討するべきです。